プレスリリース 2004/4/28
隕石中にスターダストを発見
解禁時刻: 2004/4/29 午前2時(4/29 の朝刊以降)
東京工業大学の永島一秀博士研究員,圦本尚義助教授とハワイ大学のA.N. Krot博士は隕石中からケイ酸塩鉱物からできたスターダストを発見しました。この成果は2004年4月29日発行の英国 科学雑誌Natureに掲載されます。
ケイ酸塩鉱物は地球のような惑星を作っている物質で,宇宙で最も豊富な鉱物の種類といわれています。このような惑星の素になった物質がどこからやってきたのか,その直接の証拠は発見されていませんでした。今回,東京工業大学のグループは,同位体顕微鏡 という独自に開発した最先端分析装置を駆使することにより太陽系の惑星を作ったスターダストが隕石中にわずかながら生き残っていることを発見しました。
スターダストは恒星の周りの宇宙空間でできた鉱物で,それを構成する原子は中心の恒星から放出されたものです。今回発見されたスターダストは太陽と同じ程度の恒星が一生を終えるときに作られたものであることが,測定された酸素とケイ素の同位体比から判明しました。その年齢は太陽系の年齢46億年より古いことになります。
このような太陽系の年齢より古い粒子(プレソーラー粒子)は今までも発見されていましたが,それらはSiCやグラファイトといった炭素化合物が多く,今回のように惑星主成分の素になった粒子は発見されていませんでした。今回,同位体顕微鏡という新しい装置により,虫眼鏡で小さい文字や微生物を拡大して見るように,隕石を拡大してその同位体比を直接観察できるようになりました。その結果,隕石中のナノからサブミクロンサイズの微粒子が集まった部分にケイ酸塩のプレソーラースターダストが見つかったのです。その大きさは100ナノメートルという非常に小さいもので,微粒子100万個に1個の存在確率です。このようにわずかしか生き残っていないのですが,それでも現存するプレソーラー粒子の中ではケイ酸塩スターダストは飛び抜けて多いことが判明しました。これで我々は星の子であるということが鉱物という物質レベルで直接証明されたことになります。
今後,色々な隕石の中からもっと沢山の色々な種類のケイ酸塩スターダストが見つかっていくことでしょう。(例えば,今回は赤色巨星のスターダストでしたが,超新星のスターダストなどが新しく見つかるはずです。)その同位体比から起源となった星の種類やスターダストの年齢がわかってくることが期待されます。その意味で,太陽系ができるまでの宇宙史解明への扉を開いた研究成果といえます。
英国自然史博物館のラッセル博士は、今回の成果について、「スターダストのうちで最も多量にあるはずのケイ酸塩が隕石中から見つかっていなかったのは大きな謎でした。今回の発見により,我々の起源についての理解が大きく進展しました。この発見を契機に色々なプレソーラー粒子が見つかっていくことでしょう。それにより,我々太陽系の起源とその初期におきていた出来事についての謎が解かれていくでしょう」と述べています。
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